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TITLE:IT21の会　平成30年1月度例会(第226回)議事録
 IT21の会（平成30年1月）第226回議事録
 
 日時：2018年1月12日（金）18:30～20:30
 場所：東京都南部労政会館　第３会議室
 参加者：42名（講師含む）
 
 配布資料：
 　IT21-1801-0-###　CPD参加表
 　IT21-1801-1　　　AIは技術者になれるのか？　～知識科学の視点から～
 　IT21-1801-2　　　1月例会座席表
 　（未採番）　　　 IT21の会　会則改訂について
 　（未採番）　　　 IT21の会　会則改訂について　補足資料
 
 議事：
 [1] 事務連絡
 　・会則改訂について
 　　・2018年1月の日本技術士会統括本部事務局の機械振興会館への
 　　　移転に伴い、会則に記載されている事務所の住所記載が不整合と
 　　　なることから改訂する。
 　　・今回の改訂は第1条の2の主旨である「公益社団法人 日本技術士
 　　　会内に置く」の文意を変えるものではないこと（第15条iの但し書き）
 　　　から、例会にて、会則改訂の決議を諮る。
 　　・例会にて決議を諮る案、および住所記載を改訂する案がそれぞれ
 　　　賛成者多数による挙手で改訂決議された。
 
 　・会計中間報告
 　　・2018年度会計の中間報告が実施され、特に質問なく了承された。
 
 [2] 講演（サブテーマ）
 　タイトル：セカンドライフ列伝第14話より、SF作家「海野十三」
 　　　　　　（うんの じゅうざ）～日本SF小説の開拓者～
 　講師：榎本　博康氏
 　　　　榎本技術士オフィス　所長
 　概要：
 　・ネットマガジン「ヨコハマNOW」のビジネスコラムに標題の
 　　連載を掲載。(http://yokohama-now.jp/home/)
 　・逓信省電気試験所の電気技官として勤務していた佐野昌一は、
 　　後にSF作家海野十三となった。
 　・すでに死後50年を既に経過しており、青空文庫で174作品を
 　　読むことができる。
 　・早稲田大学の無線通信学を専攻。大正12年逓信省電気試験所
 　　無線通信デバイス配属となり、そこでも300件以上の特許を
 　　執筆するなど技術的にも成果を上げた。
 　・「おはなし電気学」という解説書も執筆。
 　・電気技官として働きながら、恩師坪内教授の「無線電話」に
 　　作品を掲載した。
 　・その後「新青年」などにも作品を掲載。当時は、エログロなものが
 　　中心で、上司に掲載がバレて散々叱られたこともあった。
 　・ペンネームの海野十三の由来は、彼の麻雀好きからきており、
 　　打ち方は運が全てさ、運が十さ、というところから。
 　　後に「麻雀の遊び方」という単行本も出版。
 　・17年逓信省に勤めた後、退職し専業作家として、少年向けの
 　　長編小説を中心に活躍。
 　・昭和16年秋に白紙を受け、17年1月に南方へ従軍作家として出征。
 　・火山灰を吸って健康を害し、5月に帰国。敗戦日記、防戦日記を
 　　したためた。
 　・原爆で敗戦を悟り、一家自決へ決意するが、友人達が諭し、
 　　思いとどまる。
 　・戦後は少年向けに活路を見出すも、長編小説「怪星ガン」を最後に、
 　　健康悪化し昭和24年5月17日に帰らぬ人となった。
 　・徳島には、石碑があり、江戸川乱歩が碑文を執筆。その他未来への
 　　メッセージを記した石碑も建立されている。
 
 　質疑応答：
 　　Q. 戦艦大和に乗っていたのか？
 　　A. 「おはなし電気学」を、受け取った人が戦艦大和の主砲長だった。
 
 [3] 講演（メインテーマ）
 　タイトル：AIは技術者になれるか？　～知識科学の視点から～
 　講師：中村　直人氏　技術士　電気電子部門
 　配布資料：IT21-1801-1
 　概要：
 　（講師自己紹介）
 　・講師は、メイテック、ツーカーセルラー東京、ソニーと転職し、
 　　現在、建設技術研究所勤務。
 
 　（知識科学について）
 　・日本における知識科学の研究機関は、北陸先端科学技術大学院大学
 　　知識科学系がある。
 　・知識科学とは、「知識とはなにかを問う」、「知識は何の役に立つ
 　　のかを問う」、「いかにして知識を作り出せるのかを問う」。
 　・知識科学における探求は、社会科学的視点からの組織における知識の
 　　形成と、伝達の過程の研究を行ったり、認知科学的視点からグループでの
 　　意思決定の調査などを行う。
 
 　（講師の研究について）
 　・講師は、ソニー在籍中、社会人大学院生として研究を行い、2017年3月に
 　　修了した。
 　・対象を回路設計者、基板設計者とし、現在開発業務で分業が進む中、
 　　分業であっても、設計に付加価値をもたらし、差別化ができることが
 　　あるのではないか？という視点のもと、設計者の世界の社会学的研究を実施。
 　・主に、S社、K社の技術者にインタビューをして調査。
 　・回路設計者が作成した回路のネットリストデータを基板設計技術者に渡すが、
 　　基板設計は自由度が高い。一つの回路で無数の基板を設計できる。
 　・技術的理想と、それから乖離した現実があり、その狭間で設計を
 　　おこなっている。理想に近づける優先度の違いは設計者の好み・
 　　こだわりの違いであり、そのことが設計に影響する余地がある。
 　・分業状態にある専門が異なる設計者間では共鳴があり、共鳴を促進する
 　　要素は、回路設計者からは「美しい」とされ、基板設計者からは
 　　「意志を感じる」とされた回路図、対話と省察的実践、判断の速さ。
 　・共鳴によって、製品の差別化や創造的な設計に寄与することが
 　　期待できる。共鳴が起きることによって相手の設計のこだわり、
 　　意志と、自身のこだわり、意志が出会い受け入れられ、新たな設計を
 　　生み出すから。
 
 　（AIについて）
 　・本研究とAIの関係を考察
 　・現在、第三次AIブーム。判断ポイントを機械が学ぶディープラーニング。
 　　常時接続インターネットによる情報解放。高性能情報処理装置が
 　　身近になったことが理由。
 　・人間の特性としては、「学習の対象が選択できる」、「学習の手法が
 　　選択できる」、「脳内の動きは、まだ解明されていない」。
 　・社会分野で見た人間の特性は、「対象・手法の善悪の判断ができる」、
 　　「結果に落とし所をつける判断ができる」、「想定外の事態への
 　　対処方法の検討ができる」、「個性の発揮と受容ができる」。
 　・その他、「情報の訂正能力が高い」人間。
 　・「エネルギー的に人間は性能が良い」。
 　・AIの特徴から、情報の判断、入手、処理の質を上げ、高速化することが
 　　期待できる。
 
 　（AIは技術者になれるか？）
 　　社会文化を理解できるようになればAIは技術者らしく
 　　なったといえる。既存の「何気なくエンジニアがやっている、
 　　言葉になっていない判断」は、AIへの入力が困難など、課題が多く、
 　　学習が困難。
 　・未来も、技術者であるためには、社会の洞察し、実行の場に身を置き、
 　　前例主義を見直すことが必要。
 
 　質疑応答：
 　　Q. 転職する中で、会社の中の当たり前をうまくキャッチする方法は
 　　　あるのか？
 　　A. 「柳に風」くらいで、柔軟にゆらゆらやるのが良いのでは、
 　　　「そういう世界もあるんだな」くらいの見方で受け入れるのが良い。
 　　　このようにまず受け入れ、その後「どうしてこの会社（社会）は、
 　　　こうなのだろうか」と、社会学的な視点を交え冷静に考察することで
 　　　違和感が興味となり、発見もできます。
 　　　その過程を発見を交えて対話をすると、上手くいくケースが多いです。
 
 　　Q. AIの「I」インテリジェンスについて決まりがあるのか？
 　　　社会学的に定義があるのか？
 　　A. 決まりというのはない。色々な先生が定義してきている
 　　　様々な「知」の姿を紹介し、回答とします。
 
 　　　「知」は、様々な分類がなされています。
 　　　形式知、暗黙知については、講演中お話ししました。
 
 　　　言葉、絵などで明示された知である「形式知」、ないしは「情報知」
 　　　ともいいますが、そうではない知が多々あることが研究されています。
 　　　それは、講演でご紹介した「暗黙知」のほかに、
 　　　その地域、組織ではぐぐまれ生まれた「ローカル知」。
 　　　知識と経験に基づき創られる「経験知」などです。
 
 　　　これらの「知」には、単なる記憶の蓄積としてではなく、知の影響を受け
 　　　行動の変化を促し、また、新しい知識の創造などに活きていくことが
 　　　期待されます。
 　　　この視点では、テストで満点を取っただけの「知」＝記憶に意味はありません。
 　　　組織、会社、社会に影響を与えた知こそが知であるとなります。
 
 　　　その結果、独自の知の生態系が生まれるのは、皆様共通で理解いただけそうな
 　　　言葉で例を申し上げれば、西洋・東洋ではぐぐまれた知が違うという歴史です。
 　　　誤解を恐れずに申し上げれば、西洋医学・東洋医学といった知の体系の違いは
 　　　その端的な例です。
 
 　　　また、知は時間を超えて、多くの人類の営みに影響を与えます。
 　　　たとえば、私たち技術者が当たり前のように用いている各種公式は
 　　　知の影響を受けているものであります。
 
 　　　個人的には、形式知、情報知の必要性はもちろんですが
 　　　言葉にもならず、現地に行き、経験しないと獲得できない知を
 　　　いかに多く得るかということが、その地域、社会に適合し
 　　　かつ独自性のある発明に到達するために必要だと考えております。
 　　　「三現主義」という行動原理にもつながると考えています。
 
 　　　最後に、「無知の知」を失わないことも、また重要と考えます。
 
 [4] 初参加の方の自己紹介
 　4名
 
 （田代卓 記）
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