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IT21の会（令和3年2月）2月度例会議事録

日時： 2021年2月5日（金）　18:時30分～20時25分
開催方法：　オンライン会議方式
出席者：　51名
例会タイムスケジュール：
18:30-18:35 事務連絡、資料確認、初参加の方の自己紹介
18:35-20:20 メインテーマ講演、質疑応答
20:20-20:25 今後の予定
（20:25-21:00 オンライン懇親会）
メインテーマ講演：「ＤＸ時代に向けたアジャイルビジネスのＱＭＳ構築」
講師： 廣瀬守克氏(技術士 総合技術監理 情報工学 経営工学)
所属： 富士通株式会社 ファイナンス＆リテール
ソリューションビジネスグループ 品質マネジメント統括部
配布資料：
① DX時代に向けたアジャイルビジネスのQMS構築（講演資料）
② DX対応型プロジェクトの監査に関する一考察（参考資料）

議事： 【1】 事務連絡：無
【2】 初参加者挨拶
【3】 会長挨拶
【4】 講演：「ＤＸ時代に向けたアジャイルビジネスのＱＭＳ構築」（廣瀬守克氏）
（概要）
① 自己紹介：1984年富士通入社。2017年からDX関係の業務開始。
　　　　そこでの調査内容を紹介する予定。配布資料は、引用明示してもらえば自由に使っていただいて構わない。
② 本日の話は、まずDX分野の動向、次にアジャイル開発、DX分野の事件事故、アジャイル開発のQMS、最後に考察とまとめ。
③ DXの動向：DXは2018年に経産省がデジタル変革に大きく舵を切り、変化した。問題は2025年の崖で、対応のシナリオは
　　　　DXするものと、廃棄や塩漬けするものを切り分けて、DXを実現する事。経産省によるシステム監査基準の改訂があり、
　　　　アジャイル対応型になっている。
　　　　ポイントは個別の品質目標、ツールによる報告自動化、一体チーム運営。
④ アジャイル開発：開発スキームは、2階建てイノベーション経営。1階は従来型効率重視のPDCAスキーム（WF）による
　　　　通常の開発、2階で創造重視のOODAスキームアジャイル開発でDXビジネスを展開。2階のDXビジネス価値は新たな価値
　　　　（製品、サービス）をどのくらい早く市場に投入できるかがポイント。DXビジネスの特長としては、予測不能、計画は無駄、
　　　　実践から学ぶ、Think Big, Start Small、リーンスタートアップ、未来創造型、発展途上技術利用がある。
⑤ DX分野の事件事故：ほぼ毎日のように報道されている。2021年になってからだけでも、大きなものとしてGitHub経由の
　　　　コード流出やF-ペイのアクセス集中によるサーバーダウンがある。それ以外に、2018年から2020年にかけても5件ほど
　　　　大きな事件が発生している。
　　　　対応の考え方としては、DXも成熟すれば2階から効率重視の1階へ移行していくので品質保証が要求され、アジャイル開発に
　　　　適合したDX分野のQMS構築が必要になる。
⑥ DX分野のQMS：DX事業が2階から1階へ移行する成長に見合ったQMS適用のモデルとして、2階ではセキュリティーと
　　　　知財リスク、途中段階では緊急時対応手順の確認、1階部分では事業継続性の確認がポイント。
⑦ F社でのQMS事例：2階でのピュアアジャイル、1階でのWF+アジャイルそれぞれの特性を比較し、DX時代の品質保証が
　　　　どうあるべきか検討。
　　　　品質監査の仕組みとして、従来型（WF）チェックシートでは機能しないので、2019/4に新しいチェックシート開発に着手。
　　　　本部長代理とマネージャーへのインタビューにより、課題を整理してアジャイル品質監査のあるべき姿を抽出。
　　　　あるべき姿として、ビジネスエスノグラフィを応用したエビデンス集め、計画段階の計画チェックシート、
　　　　事業成長に見合ったQMSモデル、顧客との共創前提のQMSとなった。
　　　　具体的な検討として、ビジネスエスノグラフィ応用では、現場観察による現場に寄り添う監査を実現するために、
　　　　監査結果はプロジェクト側のやり方で共有、計画段階のチェックはWFでの審査カテゴリーをアジャイル観点で再編。

【5】 Q & A
Q: 海外発の大型アジャイルフレームワーク導入に関してどのような障害があるか？
A: F社でも事例が10%以下と少なく、まだ問題が十分把握できていない。
　現場で従来のWF型を適用してみてアジャイルでどうなるか、観察中。

Q: QMSということだと、ISO9000との対応づけはどのようにしているのか？
A: F社では1996-1997にISO9000取得。それがシステム部門にも広がっており、
　チェックシートもその中に組み入れられてISO9000と整合されているので特別な事はしていない。

Q: （自社は）アジャイルは未だスタートしておらず、アジャイルの基準作り段階にあるが、
　講演で「レベルの低い発注者」という表現はどういう意味か？
A: F社が顧客から受注した場合、サブシステムに切り分けて外注に投げることが多い。
　この時にサブシステムに切り分けて外注に発注する担当者のレベルが低いという意味。

Q: QMS構築課題整理でのインタビューで性悪説から性善説へとの表現があったがその実現のポイントは？
A: 監査する立場に立つ人間がこれまでの発想から発想転換できるかがポイント。

Q: ソフトウェア品質改善のキーポイントは？
A: フィードバックの迅速性とテスト自動化がポイント。テストのエビデンスを取ることが大事。
　　　　　 Q: テストの自動化といっても対象は膨大。優先順位は？
A: 昔の表現で「ユニットテスト」のところが対象。バリエーションのところは無理。

Q: 非再現性エラーへの対処はどのようにしているか？
A: 再現するまでテストで原因解明するのが理想だが、再現が難しいところも残るので
　それはクローズすることもある。ただ、それをちゃんと顧客に説明して信頼関係を作ることが大事。

Q: 一階、二階で監査目的が違うのではないか？
　それと、外部フレームワークを参照するとしたらどんなものがあるか？
A: 二階部分は顧客との共創で作っていくことが前提。ただ、顧客がエンドユーザーである
　B to Cのチェックシートはこれからになる。これは、一元的にできるかどうか、難しい。
　それと、外部フレームワークとしてセーフ5.0はでかすぎてこの世界ではない。

Q: アジャイルチェックシートを作っても、本社がWFだとアジャイルとWF融合が有効に機能するのか？
A: アジャイルプロジェクトの割合は少なく、普通はWFを使っている。完全な融合はしていない。
　なので、チェックシートは2つ共存している状態。新しいビジネスの成熟度合でどっちを使うのか
　整理して使っている。 　将来、融合させるか、それぞれ使っていくか、まだどっちがいいのか結論は出ていない。

Q: それで本社監査はOKを出しているのか？
A: F社の本社は大きすぎてそこまで統括していない。この取り組みは事業部単位で、
　あくまでDX事業部での試行的取組である。

Q: 医療機器（粒子線治療器）のソフトウェア開発をしているが、ガチガチのWFでアジャイルは難しい。
　今日の話で道筋が見つかるかもと期待。アジャイルとWF間のフレキシビリティについてどう考えるか？
A: タイプ4はWFで慎重にやらなくてはいけないと考える。人命にかかわる開発ではガチガチWFの方が
　安全と思う。米国はそういう面で寛容でアジャイルが可能になっているが、日本は何かあったら
　再起不能なので難しい。

Q: 外注に出した時の検収条件はどうしているか？終わりのない開発にならないか？
　WFであっても手離れが悪いと思うがどうしているか？
A: アジャイルでは顧客へ先に技術者を派遣して顧客に仕様を決めてもらっている。
　F社マネージャーは顧客の顔色を見ながら対応していく。アジャイルでは「請負」はダメ。
　顧客に「何しましょう？」ではダメだが、いくつかプロトタイプアプリを提案して選択して
　もらう事で方向を引き出していく。提案ネタを持つことが大事。アジャイルの検収については、
　検収は存在せず、あくまで時間がきてコストを使い切ったら終わり。（請負と最も違うところ）

Q: CSR(SR)に関する要求はあるか？
A: アジャイルでは無い。WFはその点シビアだが、アジャイルは与えられた金と納期で
　価値最大化するだけ。それを最初にちゃんと合意しておかないと泥沼化する。
　アジャイルはあくまで顧客とパートナーになって、一緒に作るもの。

【6】 今後の予定他
次回、3月例会の予定は、3月5日（金）　18時30分～20時30分
講演形式は一応Zoomを予定。
講演者：京都先端大　准教授　岸田逸平　先生

最後にアンケートを参加者に依頼。

以上