it21​/public​/proceedings​/200910

本テーマでは、電気通信の建物についての地震対策にフォーカスして解説を行う。電気通信設
備自体については範疇外である。
ICT の革新とICT 環境の充実により便利な社会環境が形成された反面、災害時にそれが利用で
きなくなった際の問題も大きくなってきている。情報通信会社は災害時においても可能な限り情報
通信サービスを維持することを基本方針としており、ハード、ソフトの両面から対策を立てている。
NTT グループは災害対策基本法に基づき、指定公共機関に指定されている。防災行政の整
備・推進に協力できるよう、グループとしての防災業務計画を定め、運用している。
基本的な方針は、1970 年の電気通信技術委員会特別委員会答申において、以下のように示さ
れている。
震度５：運用上全く支障が生じないようにする。
震度６：通信の質の劣化はあっても途絶させない。
震度７：通信網の大幅な機能低下を防ぐ。
・システムとしての信頼性向上
- 災害に強いネットワークづくり
- 災害に強い通信設備づくり
・重要通信の確保
- 災害時の安心情報の提供
・通信サービスの早期復旧
- 災害対策機器の配備
柱、はり、壁が損傷を受けることでエネルギーを逃がす耐震構造から、兵庫県南部地震（阪神淡
路大地震）以降、免震構造、制振構造が注目を浴び適用が大幅に増加した。建築物の構造骨組
自体の損傷が低減されるのみでなく、各階の床応答加速度も低減されることから、建築物内部の収
容物に対しても大幅な地震被害の低減が期待でき非常に有効であるため、NTT グループでは兵
庫県南部地震以降に建設した多数の重要な通信用施設に免震構造と制振構造を採用している。
大地震でも建築物に生じる加速度が大幅に低減される免震構造は、特に屋上部に大型のタワ
ーを搭載する通信用建物においてその効果を発揮した。これまでは、建築物とタワーが共振しない
ように、剛性を高めた低い建物に周期の長いタワーを組み合わせる、といったケースがほとんどで
あり、建築設計の自由度が狭かった。一方、免震構造を採用する通信用建物では、タワー部に生
じる地震力を大幅に低減できるため設計の制約が解除でき、情報通信サービスの条件に基づく理
想的な建築計画とタワー計画を可能にした。
制振構造の多くは、ダンパーにより揺れのエネルギーを吸収する構造が採られている。通信用
建物では、地震時や暴風時における水平変形が比較的大きな超高層建物を中心に制振構造を採
用している。制振構造とすることにより、地震により建築物に入力されるエネルギーの多くをダンパ
ーにより吸収できるため、構造骨組を無損傷に近い状態にすることが可能となり、また、揺れも早期
に収束するため居住性も向上される。
これからも、今後得られる新しい知見、経験などを災害対策に取り入れ安心で信頼できる情報通
信サービスの提供に努力していきたい。
・質疑応答
Q. エレベータの耐震は？
A. ガイドレールで固定されているので心配ないが、ケーブルの損傷はあり得る。
Q. 免震ラックとは？
A. 通信用ラックの架台に転がり支承のような免震部材をつけたもの。
1 つ1 つ個別のラックを動かすとラック同士がぶつかるので、連結して動くように
する。20cm くらいしか動き代がないので、端にくるとショックがある。
Q. 免震部材のメンテナンスは？
A. 不要。ただし水没時、火災時には確認が必要。
Q. コストは？
A. 2 階建くらいだと大幅なコストアップ。高層ビルの場合には数%程度。
Q. 既に立っている建築物に適用できるのか？
A. 免震レトロフィットという工法で適用可能。ただし非常にコストと時間がかかるため、
立て直した方が良いかも…。

・構造計算書偽造問題を踏まえた建築基準法・建築士法の主な改正について。
・財団法人建築行政情報センター「建築基準法令データベース」について。
・技術士法、建築士法、倫理関係規定比較。

・以下の方針として，合宿委員を選定の上で検討を進めることとし、役員からメールで会員に通知する。
(1) 形態：宿泊の合宿
(2) 場所：東京近郊（予定）
(3) テーマ：外部発信にこだわらず、合宿委員によりテーマを決定する。
（合宿委員だけに負荷がかからないよう，場所の手配，運営，発表依頼などの実務は
役員，関係者が積極的に支援する。また，役員経験者の支援をお願いする。）
(4) 委員：合宿委員は役員が募集する。